経済学者の間では、世界中で「勝者総取り市場」への転換が進んでいるということです。その理由として「絶対評価」から「相対評価」への転換があります。
左官職人を例にとると、1日に100個積める職人なら100の報酬を、90個積める職人なら90の報酬をもらうのがこれまでの「絶対評価」の市場です。
ところが検索エンジンの場合、一番優れた検索エンジンの開発者と2番目に優れた検索エンジンの開発者を比較した場合、前者のパフォーマンスが100、後者のパフォーマンスが90だとしても、報酬はその比率になることはないという。
市場で生き残れるのは最も優れた検索エンジンだけで、2番手以下は市場から敗退することになる。これが「相対評価」の市場なのです。
しかし、「ニュータイプの時代」の著書の山口周氏によると、それぞれの市場にはそれぞれの特性があり、「寡占化しやすい市場」と「寡占化しにくい市場」があるということです。
これをフレームワークを用いて考えてみると、以下のようになります。顧客に提供している2つの価値軸によって市場を分類したもので、「役に立つ・立たない」(機能的価値の有無)という軸と、「意味がある・無い」(情緒的価値の有無)という軸で4つに分類しています。

結論からいえば「勝者総取り市場」となるのは、1の枠(役に立つ・意味がない)ということになります。わかりやすいのはICチップで、その価値は単純にコストと処理能力で決定します。「職人が丹精込めて作る」という意味的な属性は製品の評価に全く組み入れられていません。
一方で「意味がある」市場では多様性が生じます。例えばコンビニを見てみると、一つのカテゴリーに一商品しか置いていない棚管理の中で、200種類以上取り揃えてある商品があります。それがタバコです。
なぜ、そんなことが起きるのかというと、タバコは「役に立たないけど・意味がある」からです。フィリップモリスを愛用している人にとって、その銘柄は代替不可能であり、人が感じる意味は多様なので、タバコの銘柄も多様になるのです。
これが「役に立つ」と「意味がある」の市場の違いであり、大企業は「役に立つ」市場でし烈な戦いを行っていますが、そこを避けて「意味がある」市場で独自のポジションを築いていくという選択をするのはいかがでしょうか。

近くのファミマを覗いたら、タバコ棚には265もの銘柄がありました。